未知の世界5


マンションを出たのは午後三時。さすがに正午では日照りが強いだろうと考えてこの時間に出てきたものの、三時もなかなかの暑さだった。






「かなちゃん、少し暑そうだから、夕方にする?」





そう聞かれたものの、マンションを出て来るのも思い切ってお母さんに着いてきた。だからこのまま散歩に挑戦しないと、心が折れてしまいそうだった。





『できたら…このまま散歩したいです。』




この時、看護師経験のあるお母さんの言うことを素直に聞いておけば良かったと…後々気付かされるんだけど。





「そう、分かったわ。体調が少しでも悪くなれば言ってちょうだいね。」





そう言われ、うなづいて返事をした。






久しぶりに外という外に出た。
前は病院に向かう車の中だったので、外を歩いた、というほど歩いてはいなかった。





『はぁはぁはぁ…。』






まだ歩いて50歩もしてないのに…息切れが半端ない…。






歩くのもだんだんとゆっくりになってきた。何かにつかまらないとまっすぐ歩けない…。






「かなちゃんつかまってて。」





フラフラして歩く私に見兼ねたお母さんが、さりげなく私に手を差しのべてくれる。最初から手をかさないのはリハビリのためだろう。こういうところが元看護師さんって感じがする。





「あら、かなちゃん。少し手が温かい…」






その言葉と同時に、反対の手で私の額に手が伸びる…。






「あら大変!」







と口で言いながらもどこか落ち着いた顔のお母さん。






「ゆっくりでいいから、帰りましょう。」






せっかくリハビリと思って外に出てきたけど、熱があるそうなので今来た道を再び歩いてマンションに戻った。




といっても、マンションから目と鼻の先の距離なんだけど…。