リビングでお母さんと幸治さんが待っていた。
「かなちゃん、寝てたみたいだけど、聴診しても異常はなかったよ。熱もないし。
今日は疲れさせちゃったな。」
食卓に座らながらお父さんが言う。
『すごく長い一日に感じました。絶対入院になるんだって覚悟しました。』
「まぁ、俺もそう思った。
けど、入院してても何も変わらない気がしてな。急がなくてもいいから、体調のいい日はお袋と散歩に行って来いよ。」
『はい…』
散歩か…ダメと言われていると行きたくなるけど、今日の一日を過ごしてみても、自分の体力のなさと疲れを感じると不安になる。
「かなちゃん、どうした?元気ないな。あんなに外に行きたがってたのに。」
『いえ、楽しみです。』
ホントは不安でたまらない…。だけどこれ以上心配させたくない。
今日の検診の結果だけでも、十分お父さんや幸治さん、それに先生方は不安に思ってたと思う。
私の気持ちだけはしっかりしてればみんな安心すると思うし…。
それに、しっかりしていけば、もっと私に今後の治療方針を先生方から相談してくれるようになるはず。私だって医者の卵なんだし…。
そんなことを考えながら、お母さんの作ってくれた料理に手を伸ばす。
この味に慣れてきた。今まで食べていた料理よりもはるかに薄くて柔らかくて。しょうがないよね、すこし前まで病院だったんだから。
ホント、お母さんがいてくれて助かった。
色々と考えていたからか、ただ黙々と食事を口に運ぶ。
「かなちゃん?大丈夫?」
前を向くとお母さんが私の顔をマジマジと見つめている。
え?何が?
「何だか浮かない顔。美味しくなかったかしら?」
『え?そんなことないですよ!
今お母さんが私のためにここにいてくれて、ホントにありがたいなって感謝してました!』
「そうなのね、それなら良かったわ。
だってかなちゃん、何だか思い悩んでる顔をしてたから。」
お母さんに胸の内を突かれてドキッとした。
「ハハ…今日は疲れました。その、だからかな…。」
幸治さんとお父さんは私の顔を見ずに黙って私の言葉を聞きながら食事をしている。
「そう。なら良かったわ。何かあったら何でも言ってちょうだいね。」
お母さんはホントに優しい。決して私を追い詰めるようなことはしないから。
食事を済ませお風呂を済ませ、寝室のベッドに入って、長かった一日を思い出していた。



