回診からまもなすると、看護師が部屋にやってきた。
『佐藤さん、これから部屋を移ります。荷物だけまとめてもらえますか?』
え?部屋を変わる?大部屋にでもなるのかな。
別に大部屋が嫌な訳でもないけど、予告なしに部屋を変わることになり、驚きを隠せないでいる。
「……え、えっと。大部屋にでも?」
『いえ…違います。今から案内しますね。』
答えにくそうに話す看護師。
「分かりました。」
荷物といっても冷蔵庫に水が入ってるだけで、後は常にカバンに入れてある。
『ここです。』
看護師に連れて来られた部屋は、以前にも来たことのある部屋だった…。
「え?ここ……?」
『はい…、進藤先生が絶対安静が必要だからって。』
すまなさそうに話す看護師。
そこはナースステーションと隣の部屋で、容態が変わればすぐに気づいてもらえる部屋。というより、容態が変わったらすぐに気づかないといけないような重症患者の部屋だった。
「え?でもどうして私なんかが?」
さすがに脱走してても、そこまで悪くないはずだけど。
『それは、進藤先生に聞いてみてもらったほうが……。』
ゴニョゴニョと後を濁した言い方をする。
その言い方で充分理解した。
ここ数ヶ月、進藤先生に怒られてばかり。進藤先生だけじゃなくて、幸治さんにも石川先生にも……。
そこまで重症ではないけど、ここまでしないと私がいなくなるからか……な。
と言っても私だって自分の体のことは自分がよく知っているし、知っていたい。
もっと私に先生方が話してくれたらいいのに。
ベッドに仰向けになり、右側を向くとナースステーションで看護師達が働く姿が見える。何気なく見ていると、白衣を着た人が数人入ってきた。
呼吸器内科の先生は進藤先生と近藤先生くらいしか知らないけど、もしかしらその二人か、他に私を知ってる人がいるかもしらないと思うと、慌ててナースステーションに背を向ける。
これじゃ休まらないよ…。
たいして重症でないのに、ここまでされるなんて……。
そう思いながら一日ソワソワしながらナースステーションに背を向けて過ごした。



