未知の世界5


朝目覚めると、既に日が昇り辺りは明るくなっていた。







病室の扉が開くと、看護師が入ってきて体温計を渡された。








『昨日はよく眠れましたか?』








「う〜ん、あんまりです。」







『そうですか、今日は検査はありませんが、ゆっくり休んでくださいね。』








「はい…ありがとうございます。」








ちょうど鳴った体温計を渡すと、看護師は、体温のことは何も言わず、病室を出て行った。








それと入れ替わりに入って来たのは……。







幸治さん。








すごい怖い顔……、朝から怒ってる。








その表情一つで何が言いたいのかすぐに分かった。







きっと昨日のことは進藤先生か石川先生から聞いているんだろう。








「お、おはようございます…。」









『あぁ。







俺が言いたいことわかるか?』







怒った顔のまま、ベッド際の椅子に腰掛ける。








「……はい。」









『前にも言っただろ?病院は変われないって!なんでそんな失礼なことを先生方に言うんだ!?








それに、発作もあったんだって?』








コクリと頷く。









『もういい加減にしないと、もたなくなるぞ!』







そう言って人差し指で私の心臓を示す。








『自分の病状は、自分が一番よく分かってるだろ?』








いや、それは違う。








「そんなことないですっ。







私よりも幸治さんや先生方の方が詳しいです。







私の体だけど、私には何も教えてもらえません。」






実際そうだ。何度自分のことなのに教えてもらえなかったことか……。








『全てを言って、かなは受け入れられたのか?タイミングを見て言わないといけないこともあるだろ?







せっかく頑張って心臓に気をつけた生活を送ってきたのに、何か異変のあったときにすぐに言わなかったら全て水の泡だろ?』








なんかそれは違う……。








私だけ情報を共有してもらえてないのと同じじゃない。自分たちに必要なことは言えって……。そう聞こえる。







「幸治さん……もう帰りたい。もう帰りたいよ!」







この気持ちを分かってもらえないままだと思うと、悲しくなってくる。








涙が頬を伝う。








『帰ってどうするんだ?仕事に来るのか?』








「家で……家でゆっくりさせて欲しいよ。」








『ダ〜メだ!俺のいない家の中で何かあったら危険だ!』








「それでも……帰りたいよ。」








涙は止まらない。








「ヒック……ヒッ……ヒック……ヒッ……」







涙がこれ以上出ないようにこらえるけど、もう止まらなくなっていた。







「ヒッ……、ハァハァハァ。








ヒック…ハァハァハァ……。







ゲホッゲボ、ゲホッゲボ、ゲホゲホゲホゲホ……」








止まらない涙に、喉が詰まって咳が出始めると、








「ゲホゲホゲホゲホ!ゲホゲホゲホゲホ!ゲホゲホゲホゲホ!」







とうとう発作が始まった。








「ゲホゲホゲホゲホゲホッゲボ!」








『かな、落ち着け。ゆっくり深呼吸。』








椅子に座っていた幸治さんが、私の背中を撫でる。






その手が嫌で、私は払いのける。








ナースコールで看護師に指示をしている。






その合間合間に私の背中を撫でるけど、私はその手を振り払う…。






それでも咳は出続ける……。








そして次第に耐えきれなくて……。







意識を失っていった……。