朝目覚めると、既に日が昇り辺りは明るくなっていた。
病室の扉が開くと、看護師が入ってきて体温計を渡された。
『昨日はよく眠れましたか?』
「う〜ん、あんまりです。」
『そうですか、今日は検査はありませんが、ゆっくり休んでくださいね。』
「はい…ありがとうございます。」
ちょうど鳴った体温計を渡すと、看護師は、体温のことは何も言わず、病室を出て行った。
それと入れ替わりに入って来たのは……。
幸治さん。
すごい怖い顔……、朝から怒ってる。
その表情一つで何が言いたいのかすぐに分かった。
きっと昨日のことは進藤先生か石川先生から聞いているんだろう。
「お、おはようございます…。」
『あぁ。
俺が言いたいことわかるか?』
怒った顔のまま、ベッド際の椅子に腰掛ける。
「……はい。」
『前にも言っただろ?病院は変われないって!なんでそんな失礼なことを先生方に言うんだ!?
それに、発作もあったんだって?』
コクリと頷く。
『もういい加減にしないと、もたなくなるぞ!』
そう言って人差し指で私の心臓を示す。
『自分の病状は、自分が一番よく分かってるだろ?』
いや、それは違う。
「そんなことないですっ。
私よりも幸治さんや先生方の方が詳しいです。
私の体だけど、私には何も教えてもらえません。」
実際そうだ。何度自分のことなのに教えてもらえなかったことか……。
『全てを言って、かなは受け入れられたのか?タイミングを見て言わないといけないこともあるだろ?
せっかく頑張って心臓に気をつけた生活を送ってきたのに、何か異変のあったときにすぐに言わなかったら全て水の泡だろ?』
なんかそれは違う……。
私だけ情報を共有してもらえてないのと同じじゃない。自分たちに必要なことは言えって……。そう聞こえる。
「幸治さん……もう帰りたい。もう帰りたいよ!」
この気持ちを分かってもらえないままだと思うと、悲しくなってくる。
涙が頬を伝う。
『帰ってどうするんだ?仕事に来るのか?』
「家で……家でゆっくりさせて欲しいよ。」
『ダ〜メだ!俺のいない家の中で何かあったら危険だ!』
「それでも……帰りたいよ。」
涙は止まらない。
「ヒック……ヒッ……ヒック……ヒッ……」
涙がこれ以上出ないようにこらえるけど、もう止まらなくなっていた。
「ヒッ……、ハァハァハァ。
ヒック…ハァハァハァ……。
ゲホッゲボ、ゲホッゲボ、ゲホゲホゲホゲホ……」
止まらない涙に、喉が詰まって咳が出始めると、
「ゲホゲホゲホゲホ!ゲホゲホゲホゲホ!ゲホゲホゲホゲホ!」
とうとう発作が始まった。
「ゲホゲホゲホゲホゲホッゲボ!」
『かな、落ち着け。ゆっくり深呼吸。』
椅子に座っていた幸治さんが、私の背中を撫でる。
その手が嫌で、私は払いのける。
ナースコールで看護師に指示をしている。
その合間合間に私の背中を撫でるけど、私はその手を振り払う…。
それでも咳は出続ける……。
そして次第に耐えきれなくて……。
意識を失っていった……。



