はぁ……困った。
さっきからずっと石川先生が私のベッドに座ったまま私と睨めっこ状態……。
『どうしてこうなんだ?』
もう消灯前。今日は当直らしい。
『この検査結果に出てる以外ではいつあった?』
自宅であったけど……、今更言えない……。
「…………。」
さっきから同じ質問をされ続けている。
すぐに「ありませんでした。」と答えればこんなことにはならなかったけど、一瞬迷ってしまったせいで遅かった……。
『あったでしょ!?』
突然、黙っていた進藤先生が口を開く。
『僕がマンションに行った時、あったでしょ?』
う……、気づいてたんだ。
『どうなんだ?』
石川先生に聞かれる。
「…………はい。」
と返事をすれば、それと同時に二人のため息が聞こえる。
『なんでそうやっていつも黙ってるんだ!?』
「…………。」
『ちゃんと答えなさい!』
「……それは。
言っても言わなくても怒られるから……。」
『はぁ?』
「いつも私が何を言っても、言わなくても怒られる……。誰に言っても言わなくても、怒られるから。
……やっとのことで勇気出して言っても、頭ごなしに怒られる。理由も聞かないで。
それに、やりたい仕事も好きなようにはできなくなるし。」
『なんで、そんなことを思うかな……。』
「分かりませんよ、他の人には……。
体の動くうちにって思って生きてる私の気持ちなんて……。」
『確かに、お前の気持ちは俺には分からないわ。』
同情のかけらもない言葉を返される、一瞬固まる。
『でも、他の患者にもそうだけど、俺はお前を何としてでも助けたいし、医者としても何不自由なくさせてやりたい。
だけど、最低限の生活して、内服して、治療していかないと医者としてどころか人として普通の生活はできなくなるんだ。』
「もう……嫌なんです。」
『何が?』
「監視されてるみたいで……。
朝出勤して、夜帰るまで。
家でも厳しく言われるし。」
『だから?』
「…………。」
『で?だからどうしたいの?』
「……わりたい。」
『ん?』
「かわ……りたい。
病院を……かわりたい……です。」
少しの沈黙の後、石川先生が口を開く。
『バカか、お前は……。』
どうせ私はバカだよ。患者としても医者としても……。
『それ、本気で言ってる?』
すると、再び進藤先生が口を開く。
「……はい。」
『ただでさえこの病院にいてちゃんと治療を受けないのに、他の所に行ったら、絶対に診察を受けないよね?
そんなの分かってることじゃない。
それは絶対に許可できないな。』
…………。
きっぱりと言われてしまい、何も言い返せない。
また沈黙が続く。
そして次に口を開いたのは石川先生。
『今はどの病院にも引き継げない。
本気でよそにかわりたいと思っているなら、もっと回復してきてここでなくても他でも診れるような状態になれば、いつ代わってもらっても構わない。
今はもっと、自分と向き合うことだな!』
そういうと、二人は部屋を出て行った。
勇気を出して言っても怒られる……。
はぁ……。二時間以上も、疲れた……。



