未知の世界5


病院に着いて待合室に座ることもなく、すぐに診察室に通された。





まるでビップな対応を受けてるみたい。






私が研修していたときに会っていた患者さんに会わないようにかな…。







そんなことを思いながら、初めて訪れる診察室に入る。







呼吸器内科?循環器内科?






どちらの診察室?





そう思っていると、答えはすぐに分かった。





私のためにそれぞれ必要な科の先生が集まって来ていた。






「おはようございます。よろしくお願いします。」





と現れた先生方に頭を下げる。






進藤先生、石川先生、幸治さん、えっと…脳神経外科の先生、それから。






!?






お父さん!






お父さんが白衣を着て待っていた。






「やあ、驚いた?」






朝まで一緒にいたのに。






今日の検診に一緒に行くと思ってたのにここに白衣を着ているなんて。






まさか…。






「そう、数日前からここの病院で働いてるの。」






胸のプレートを見ると、




『名・教授』




!?






名誉教授!





ってすごすぎ!





目を見開いてあっけにとられていると、進藤先生が診察室の椅子に座る。





「かなちゃん、診察を始めるよ。





今日は一つ一つの科をまわってもらうことになるとかなちゃんの負担になるから、ここでできることは先に済ませようと思ってるよ。」





それでこんなにも先生がいるんだ。





緊張しちゃうな。





なんて思いながら椅子に座る。





「一週間退院してどうだった?喘息になったり、咳き込んだり、体は怠かったりしたかな?」





「喘息はありませんでした。
怠いというより、寝てばかりで少し動いただけでも疲れるので、ほとんど寝てばかりでした。」






「傷口は傷んだ?」





「何もしなければ痛むことはありませんでした。」





「傷口は見てみた?」






「いえ…。まだ。」






「他に変わったことは?」






「いえ、ありません。」





一通り聞かれ答えると、全てパソコンのカルテに記入する進藤先生。




「うん、分かったよ。そしたら聴診しようね。僕が終わったら、ここに先生全員が胸の音を聞くからね。」





え?そんなの嫌だな…。





なんか嫌…





「じゃあ服上げて。」





そう言われるけど、気がすすまない。




「ん?かなちゃん?」





ただでさえ胸を見られるのは嫌なのに。






背中にいる看護師さんが服をあげようとする。






手で服を抑えて抵抗する。





『かなっ!』





幸治さんから叱られた。





でも…それっておかしくない?






私だって女性だし、それに職場の上司にもなる人達の前で。いくら主治医だからって全員の前で胸を出すなんて…。





座ってるだけでも疲れる。






皆んなの視線が痛くて、涙が出てくる。







頭もぼーっとする。だんだん痛くなってきた。






目を瞑った。







目がグルグルする…。







あぁ、さっき家の玄関であったように…