未知の世界5


「かなちゃん、そろそろ行くわよ。」





部屋で着替えを済ませたところに、お母さんの声。







「あ、今いきまーす。」






退院して初めての外出。
少し怖いような嬉しいような。






「かなちゃん、体調が悪くなったらすぐに言ってちょうだいね。





今日は一日中病院だから、疲れちゃうと思うし。」







優しい言葉をかけてくれるお母さん。






「はい、ありがとうございます。」






そんな会話をしながら玄関まで歩く。






久しぶりに玄関まで来た気がする。






今まで暮らしてきた家なのに、この数ヶ月の入院生活と退院以来、来ることのなかった玄関。
なんだか不思議な空間に感じた。





座って靴を履き、立ち上がる。





と、その瞬間っ!






ドンっ!






目眩と共に体が大きく揺れ、壁に体を打ち付けた。







あれ?






目眩に反応できず、気づいたら倒れていた。体も頭も反応が鈍くなっている。





玄関に座り込む。





「かなちゃん、大丈夫っ!?」






前にいたお母さんが、私のそばに来て声をかけてくれる。





でもすぐには返事ができない。





気持ち悪い。





少し落ち着いたところで顔を上げてお母さんに大丈夫と言う。





「ゆっくり、ゆっくり立ち上がろうね。」





返事をする余裕もなく、お母さんに支えられながら立ち上がる。






あぁ、痛かったし、気持ち悪かったし、恥ずかしかった…。





こんなことでフラフラしちゃうなんて。





自分の体力のなさ、体の弱さに驚いた。