「かなちゃん、そろそろ行くわよ。」
部屋で着替えを済ませたところに、お母さんの声。
「あ、今いきまーす。」
退院して初めての外出。
少し怖いような嬉しいような。
「かなちゃん、体調が悪くなったらすぐに言ってちょうだいね。
今日は一日中病院だから、疲れちゃうと思うし。」
優しい言葉をかけてくれるお母さん。
「はい、ありがとうございます。」
そんな会話をしながら玄関まで歩く。
久しぶりに玄関まで来た気がする。
今まで暮らしてきた家なのに、この数ヶ月の入院生活と退院以来、来ることのなかった玄関。
なんだか不思議な空間に感じた。
座って靴を履き、立ち上がる。
と、その瞬間っ!
ドンっ!
目眩と共に体が大きく揺れ、壁に体を打ち付けた。
あれ?
目眩に反応できず、気づいたら倒れていた。体も頭も反応が鈍くなっている。
玄関に座り込む。
「かなちゃん、大丈夫っ!?」
前にいたお母さんが、私のそばに来て声をかけてくれる。
でもすぐには返事ができない。
気持ち悪い。
少し落ち着いたところで顔を上げてお母さんに大丈夫と言う。
「ゆっくり、ゆっくり立ち上がろうね。」
返事をする余裕もなく、お母さんに支えられながら立ち上がる。
あぁ、痛かったし、気持ち悪かったし、恥ずかしかった…。
こんなことでフラフラしちゃうなんて。
自分の体力のなさ、体の弱さに驚いた。



