未知の世界5


「かな、起きたか。」




リビングに入ると同時に幸治さんに声を掛けられる。




時計を見ると9時。皆んな食事を済ませてゆっくりしていたようだ。





『かなちゃん、一度胸の傷を見せてもらえないかな?』





お父さんが私に気を遣いながら話す。




もしかしたら、私が胸を触られたくないこと、幸治さんが話したのかな?




う…ん。





嫌だな。




「かな、診てもらえ。入院中は毎日消毒があったんだから。





それにかなは、自分の傷を見てないだろ?気付かない間に膿んでたらどうする?」






『えっ!?膿んでる?』





そんなことあるの…。





『かなちゃん、いいかな?』





そう言われ、断れる訳がない。




渋々お父さんのいる方へ歩く。





『じゃあ、ここに横になってね。』





ソファに横になるように促され、服を捲ろうとする。





あぁ…でも。やっぱり嫌だな。





『大丈夫だよ、かなちゃん。痛いことはしないから。』





それは分かってるんだけどな。





力強く目を瞑り、服を捲って胸を見せる。





早く終わってください…!





なんて思っていると、意外とすぐに終わった。





『かなちゃん、傷は綺麗に治ってきてるよ。このままで大丈夫だよ。』






あぁ良かったと、目を開き、お父さんにお礼を言った。





それにしても傷を見てないから余計に怖い。
だからと言って見るのは嫌だな。





はぁ、ある日突然、傷がなくなってくれないかなぁ。




ダメダメ!そんなこと言ってたら。
だって私の胸の中には、新しい心臓が頑張ってるんだもん。





そう言い聞かせ、服を整えた。