「かな、起きたか。」
リビングに入ると同時に幸治さんに声を掛けられる。
時計を見ると9時。皆んな食事を済ませてゆっくりしていたようだ。
『かなちゃん、一度胸の傷を見せてもらえないかな?』
お父さんが私に気を遣いながら話す。
もしかしたら、私が胸を触られたくないこと、幸治さんが話したのかな?
う…ん。
嫌だな。
「かな、診てもらえ。入院中は毎日消毒があったんだから。
それにかなは、自分の傷を見てないだろ?気付かない間に膿んでたらどうする?」
『えっ!?膿んでる?』
そんなことあるの…。
『かなちゃん、いいかな?』
そう言われ、断れる訳がない。
渋々お父さんのいる方へ歩く。
『じゃあ、ここに横になってね。』
ソファに横になるように促され、服を捲ろうとする。
あぁ…でも。やっぱり嫌だな。
『大丈夫だよ、かなちゃん。痛いことはしないから。』
それは分かってるんだけどな。
力強く目を瞑り、服を捲って胸を見せる。
早く終わってください…!
なんて思っていると、意外とすぐに終わった。
『かなちゃん、傷は綺麗に治ってきてるよ。このままで大丈夫だよ。』
あぁ良かったと、目を開き、お父さんにお礼を言った。
それにしても傷を見てないから余計に怖い。
だからと言って見るのは嫌だな。
はぁ、ある日突然、傷がなくなってくれないかなぁ。
ダメダメ!そんなこと言ってたら。
だって私の胸の中には、新しい心臓が頑張ってるんだもん。
そう言い聞かせ、服を整えた。



