未知の世界5


なんて考えていると、診察室のカーテン奥から誰かが入ってくる気配。







ん?







『入ります。』







と入って来たのは、青色の術衣を着た幸治さん。





オペは終わったのかな。







進藤先生がメモしていた問診結果を覗いている。







聞かれた事には答えたし、大丈夫だよね。







ハッ!?








忘れてた!さっきまで覚えていたのに、昨日のことを言わないでおいたことを忘れてた……。







ちらっと幸治さんを見ると、まだ気づいてないみたい。







『聴診結果はどうでしたか?』








『うん、喘鳴も聞こえないし、大丈夫そうだよ。最近のやつれ具合が心配だったけど。
疲れも出たかな…。いろいろあったみたいだしね。
ただ、食欲がないことが心配かなぁ。』








と進藤先生が幸治さんに説明する。








『生活状況は、他に問題なさそうだしね。』







と言う進藤先生の言葉に、ん?と幸治さんの表情が止まる。







そして私の方を向くと、








『何か言わないといけないことがあったよな?』








うぅ……。バレてる。








『ん?何かな?』







と進藤先生。







近くにいる石川先生も私を見つめている。





言いにくい……。








「ぇっと……その……、あの……。」








言いにくい。なんて言えばいいのか……。






『昨日』







「昨日」








『晩御飯どきに。』








「晩御飯どきに。」








『続きを自分で言いなさい!』







「は、はい。








えっと、お茶とその、ビールを間違えて……。」









『飲んじゃったのかな?』







進藤先生に聞かれる。







「はい……。」







答えると同時にため息が聞こえる。








『そういうことは先に言ってくれると嬉しいな。』






「はい、すいません。」








『どのくらい?』







「グラス3分の2くらい。」







『その後は何か異変はなかったかな?』







「はい、大丈夫です。」









『分かったよ。そしたら血液検査を追加しておくね。』







「ぇえっ!」









『当たり前だ!』







驚く私に幸治さんから一喝……。







進藤先生の聴診の後は石川先生。







心臓の音も異常なく、次は検査室で喘息の数値を測って、吸入となった。