なんて考えていると、診察室のカーテン奥から誰かが入ってくる気配。
ん?
『入ります。』
と入って来たのは、青色の術衣を着た幸治さん。
オペは終わったのかな。
進藤先生がメモしていた問診結果を覗いている。
聞かれた事には答えたし、大丈夫だよね。
ハッ!?
忘れてた!さっきまで覚えていたのに、昨日のことを言わないでおいたことを忘れてた……。
ちらっと幸治さんを見ると、まだ気づいてないみたい。
『聴診結果はどうでしたか?』
『うん、喘鳴も聞こえないし、大丈夫そうだよ。最近のやつれ具合が心配だったけど。
疲れも出たかな…。いろいろあったみたいだしね。
ただ、食欲がないことが心配かなぁ。』
と進藤先生が幸治さんに説明する。
『生活状況は、他に問題なさそうだしね。』
と言う進藤先生の言葉に、ん?と幸治さんの表情が止まる。
そして私の方を向くと、
『何か言わないといけないことがあったよな?』
うぅ……。バレてる。
『ん?何かな?』
と進藤先生。
近くにいる石川先生も私を見つめている。
言いにくい……。
「ぇっと……その……、あの……。」
言いにくい。なんて言えばいいのか……。
『昨日』
「昨日」
『晩御飯どきに。』
「晩御飯どきに。」
『続きを自分で言いなさい!』
「は、はい。
えっと、お茶とその、ビールを間違えて……。」
『飲んじゃったのかな?』
進藤先生に聞かれる。
「はい……。」
答えると同時にため息が聞こえる。
『そういうことは先に言ってくれると嬉しいな。』
「はい、すいません。」
『どのくらい?』
「グラス3分の2くらい。」
『その後は何か異変はなかったかな?』
「はい、大丈夫です。」
『分かったよ。そしたら血液検査を追加しておくね。』
「ぇえっ!」
『当たり前だ!』
驚く私に幸治さんから一喝……。
進藤先生の聴診の後は石川先生。
心臓の音も異常なく、次は検査室で喘息の数値を測って、吸入となった。



