今日は幸治さんが当直明けで呼び出しがないということもあって、幸治さん、お父さん、お母さん、翔くん、翔くんの両親、そしてミキさん。まぁ私以外の大人たちは、開始早々からビールを開け、かなり早いペースで飲み始めた。
もちろん私は子供たちと遊ぶのに夢中で飲めないことなんて気にもしていない。
宴会が始まって二時間が経った頃、気づくと子供たち二人は眠そうな顔をしていたので、呑んでいるミキさんに代わって、別の部屋で子供たちを寝かしつけた。
リビングに戻ると、ミキさんにお礼を言われ、ミキさんの隣の席に座った。
『かなちゃん、本当にありがとうね。いつも助かるわぁ。』
「いいえ、私の方こそ楽しませてもらってますよ。」
『仕事でも子供たちをみて、嫌にならない?』
「仕事の時は子供たちの相手をなかなかしてあげれなくて。一日2、3回顔を出せたらいい方なんですよ。
今日はあの子たちと思う存分遊ばせてもらえて、心が楽しくなりました。」
『そう言ってもらえると助かるわぁ。』
ミキさんとの会話は話が尽きない。
もしかしたら最近は、翔くんより喋ってるかも。
すると近くにいた翔くんのお父さんが、
『かなちゃんは、仕事の方はどう?職場に慣れてきた?』
「はい。もともと知っている先生や看護師さんも多いので、職場の環境にはすぐに慣れました。」
『そういえばかなちゃん。小児科の医局長が言ってたけど。今度小児外科医育成プロジェクトに参加するんだって?』
と、情報の早いお父さん。
「は、はい……、まさか私も選ばれるとは思ってもなくて……。
他の方の足を引っ張らないように気をつけます……。」
正直不安しかないこのプロジェクト。私に務まるのか。
『大丈夫だよ、かなちゃん。
幸治だって、このプロジェクトを受けてきたんだからさ。みんな最初は初心者なんだからさっ!』
そうだけど、頭の出来具合が…。
と、私は手元にあったコップを見ずに手にすると、一気に飲み干した。
……あれ?
お茶と思って飲み干したけど、なんか苦い……。
『おいっ!』
ちょうどトイレから帰ってきた幸治さんが、私の手元を見て声をかける。
同じように手元を見ると……。
それはお茶ではなく、幸治さんの飲みかけのビールだった。
え!?ど、どうしよう。
「こ、幸治さん。飲んじゃった……!」
慌てて幸治さんを見る。
私の行動に言葉が出ないのか、驚いて立っている。
「どうしよう…。」
『あらら。まぁでも、すぐに何か異変が起こるわけではないけど、何かあったら幸治に言うんだよ。幸治も寝る前に診てあげなさい。』
「はい。」
顔が真っ赤になって酔っているお父さんだけど、こういう時の判断力はすごい。
やってしまった…今まで数々の事に気をつけていただけあって、これからが怖い……。
『夜は診るけど、知らないぞー、明日検診だろ?ちゃんと進藤先生に言うんだぞ。』
あっ……。そうだった。
「幸治さんもいますよね…?」
『俺は明日、オペが一日入ってるから無理だな。』
ぇえ!そんな……。
『お父さんも明日は幹部会で朝から会議があるんだ。』
チーン……。
言いにくい……。この場にいたお父さんや幸治さんがいれば、何とか怒られないに違いないけど。
私一人ではなんて言われるのか……。



