未知の世界5


再び目を開けると、隣には幸治さんの寝顔がある。


ん、可愛い…。


軽く額にキスをする。



「…ん?」



今ので起きてしまったのか、幸治さんが薄く目を開けた。



さすがに気づいてないよね…?




そう思いながら、体をゆっくり起こしてかぶっていた布団を整える。




「ん?もう終わり?」





ビクッ





「…え?気づいてた…。」




まさか起きていたとは。
そうとも知らずに寝起きの幸治さんにキスをするなんて。




顔がみるみるうちに赤くなるのを感じた。




「あらぁ?顔が赤いよ〜。




そんな子はお熱がないか、確認っ。」





そう言われ幸治さんに手を引かれてベッドに仰向けにされる。




そして幸治さんは私に覆いかぶさる。





え?え?





チュ





額の髪を掻き分けて、優しく今度は幸治さんがキスをする。





恥ずかしてく目のやり場に困る…。





そして唇に、熱く。





止まる様子のない幸治さんは、気づくと私の服の中に手を入れている。





「いやっ‼︎」





胸に手が触れるか触れないかで、幸治さんを拒んでしまった。






「ごめん…。」






驚いた顔をした幸治さんだけど、すぐに理解してくれたのか、手を離し服を整えてくれる。





「…ごめんなさい。」




今度は私が謝る。






やっぱり、心臓近くに触れられるのが怖い。





手術の後だからなのか、ものすごく怖い…。





また術後のあの痛みが蘇りそうで。






まだマジマジとこの傷を見たことがない。





前回の手術後だってそうだった。





いつ見たんだろう。気づいたら気にならないような傷跡だった。





跡は大きく残っていたものの、綺麗な傷跡。でも、あの時も触られるのは怖かった。





ただ、あの時以上に。今回はこの傷跡の中に、今までの私の心臓ではなくて、違う子の心臓があると思うと、何だか違和感を感じるし、誰かに触れられるのも怖い。





大事にしなきゃと思いすぎて、恐る恐る慎重になってしまうところがある。




だから、入院中の聴診はものすごく苦手だった。





本当は嫌だけど、そんなこと石川先生に言える訳もなく…。





ただじっと終わるのを待っていた。







「まだ見てないのか?」





考え込む私を見たからなのか、真剣な眼差しの幸治さんに尋ねられる。




その顔は医者というよりも、佐藤幸治の顔。心から心配してくれている。





そして私は毎度のように頷くだけ。






「まぁ、そのうち見られるようになるんだろうな。」






今度は明るい声でいうと、ベッドから離れ部屋から出て行く。






幸治さん、怒らせちゃったかな…。