再び目を開けると、隣には幸治さんの寝顔がある。
ん、可愛い…。
軽く額にキスをする。
「…ん?」
今ので起きてしまったのか、幸治さんが薄く目を開けた。
さすがに気づいてないよね…?
そう思いながら、体をゆっくり起こしてかぶっていた布団を整える。
「ん?もう終わり?」
ビクッ
「…え?気づいてた…。」
まさか起きていたとは。
そうとも知らずに寝起きの幸治さんにキスをするなんて。
顔がみるみるうちに赤くなるのを感じた。
「あらぁ?顔が赤いよ〜。
そんな子はお熱がないか、確認っ。」
そう言われ幸治さんに手を引かれてベッドに仰向けにされる。
そして幸治さんは私に覆いかぶさる。
え?え?
チュ
額の髪を掻き分けて、優しく今度は幸治さんがキスをする。
恥ずかしてく目のやり場に困る…。
そして唇に、熱く。
止まる様子のない幸治さんは、気づくと私の服の中に手を入れている。
「いやっ‼︎」
胸に手が触れるか触れないかで、幸治さんを拒んでしまった。
「ごめん…。」
驚いた顔をした幸治さんだけど、すぐに理解してくれたのか、手を離し服を整えてくれる。
「…ごめんなさい。」
今度は私が謝る。
やっぱり、心臓近くに触れられるのが怖い。
手術の後だからなのか、ものすごく怖い…。
また術後のあの痛みが蘇りそうで。
まだマジマジとこの傷を見たことがない。
前回の手術後だってそうだった。
いつ見たんだろう。気づいたら気にならないような傷跡だった。
跡は大きく残っていたものの、綺麗な傷跡。でも、あの時も触られるのは怖かった。
ただ、あの時以上に。今回はこの傷跡の中に、今までの私の心臓ではなくて、違う子の心臓があると思うと、何だか違和感を感じるし、誰かに触れられるのも怖い。
大事にしなきゃと思いすぎて、恐る恐る慎重になってしまうところがある。
だから、入院中の聴診はものすごく苦手だった。
本当は嫌だけど、そんなこと石川先生に言える訳もなく…。
ただじっと終わるのを待っていた。
「まだ見てないのか?」
考え込む私を見たからなのか、真剣な眼差しの幸治さんに尋ねられる。
その顔は医者というよりも、佐藤幸治の顔。心から心配してくれている。
そして私は毎度のように頷くだけ。
「まぁ、そのうち見られるようになるんだろうな。」
今度は明るい声でいうと、ベッドから離れ部屋から出て行く。
幸治さん、怒らせちゃったかな…。



