「ようやくシャバの空気が吸えたな。」
ぶっきらぼうに、でも面白おかしい言葉をかけてきたのは石川先生。
無菌室でも何度も来てくれた。
そして変わらず、私の主治医たちは来るたびに聴診。
その理由は、進藤先生と同じだろう。
「あ、あの…担当患者の子達ははどんな様子ですか?」
ずっと気になっていたけど、確認するほど体力はなく、今更だけど思い切って聞いてみる。
『…そんなこと心配する暇があるなら、早く治せ。』
そう言われても…。
気になる。
チラッとこちらをみる石川先生が、
『心配するな。特に何も起きてないから。』
その言葉を聞いて安堵した。
『そんなことより、今は休むことだろ?
お前だから言うが、肺炎は心臓にも喘息にも命取りなんだ。
今発作が出てないことが、奇跡だぞ。』
「はい…。」
ごもっともです。
肺炎になったのに、喘息の発作は一切出ていない。
私が一番驚いている。
石川先生の言葉に、やはり自分の体は普通の人よりもはるかに弱っていることを改めて痛感し、言葉も出ずにいると、
『今日の検査で何もなければ明後日には退院だ。』
そんな朗報が耳に届き、もやもやしていた心の霧が一瞬で晴れた。
『発作が起きてないからな。
あ、でも。』
「え?」
何、その間は…。