気づくと寝ていた処置室に、お父さん、幸治さん、それから石川先生に進藤先生が一枚の紙を見ている。
一枚の紙…
検査結果なんだろう。
どのくらい寝てたんだろう。
きっともう診察は終わっているんだろうけど。
「起きた?」
進藤先生が私に気づいて側に来る。
「どう?気持ち悪くない?」
そう聞かれると、家にいたより体が楽になっていることに気づく。
『は…い。』
寝起きでまともに声が出ない。
「熱も少し下がってきてるし、点滴で薬入れてるから、もう少し楽になると思うからね。」
そう言われ、頷き返事をする。
みんなして神妙な面持ちで見つめている検査結果が気になってしまい、進藤先生から一枚の紙に目を移す。
「結果?」
もう一度頷く。
「結果はね、
患者さんからもらっちゃったかな?
ウイルス性の肺炎だったよ。」
『えっ!?』
分かってはいたはずだけど、改めて患者さんから感染した肺炎だと気づくと、悲しみがこみあげてきた。
医師として、患者さんから移るなんて…
こんなにももろくて使えない体が情けない…。
『大丈夫だよ。誰にだってあることだよ。』
とお父さんが私の頭を撫でる。
『いい医者ほど、患者から感染するもんだ。』
お父さんに撫でられた手が、堪えていた涙を一気に押し出すかのように大粒の涙が耳に垂れる。
いい医者ほど…という言葉に反応した訳ではないけど、後から涙がポロポロと流れ出る。
『しばらく忙しかったからな、ゆっくり休んだらいいから。』
しばらくは戻らなくても大丈夫、
と石川先生に言われているように聞こえてしまう。
いつもの悪い癖。
フォローしてもらってる言葉もマイナスに捉えてしまう。
「じゃあ、これ以上感染しないように、少しだけ、無菌室に行くからね。」
無菌室…、そこまでひどいんだ。
きっとこれ以上何かに感染しては、命が危ないのだろう。



