寝ているかなの胸元に静かな聴診器を当てる。
「…ん?」
目を覚ましたかな。
「えっ?えっ?」
驚いた…。ちょっと表情の怖い…あ、暗い幸治さん。
聴診してる…。
しばらくじっとしている。
『胸の音は悪くないな。
体は怠くないか?』
気づくと脇に体温計。
「はい、特に何も。」
聴診して異常なく、かなの言葉通りと信じてくれたのか、それ以上何も聞かれない。
「どうしたんですか?」
何もないのに診察する幸治さんは珍しい。いつもは私に何かしらの症状があるときだけ診察する。
『実はな、さっき石川先生から連絡がきた。
昨日、かなの当直で担当した三人の患者のうち一人は、今日の詳しい検査でウイルス性の肺炎らしい。』
「えっ!?昨日は検査では肺炎の症状もなければ、血液検査でも肺炎でなかったのに?」
『あぁ、その時はまだ喘息か気管支炎だったんだろうな。
今日に熱が上がってきたから、再び検査したら肺炎になったみたいだ。
昨日の処置は、何ら問題ないし、適切であったから心配するな。
ただ、肺炎が移ってないか心配して石川先生から連絡が来たんだ。』
そう言いながら私の頭をなでる。
たまにこうやって優しくなでてくれる。
こんなことされたら、もっと甘えたい。
『もう少し寝てろ。今は何ともなくても、夜に熱が出てくるかもしれないからな。』
そういうと、頭から幸治さんの手が離れる。
離さないで…と思うのだけど、今更言えない。



