未知の世界5


寝ているかなの胸元に静かな聴診器を当てる。






「…ん?」






目を覚ましたかな。







「えっ?えっ?」







驚いた…。ちょっと表情の怖い…あ、暗い幸治さん。
聴診してる…。







しばらくじっとしている。







『胸の音は悪くないな。






体は怠くないか?』







気づくと脇に体温計。







「はい、特に何も。」








聴診して異常なく、かなの言葉通りと信じてくれたのか、それ以上何も聞かれない。







「どうしたんですか?」






何もないのに診察する幸治さんは珍しい。いつもは私に何かしらの症状があるときだけ診察する。







『実はな、さっき石川先生から連絡がきた。







昨日、かなの当直で担当した三人の患者のうち一人は、今日の詳しい検査でウイルス性の肺炎らしい。』







「えっ!?昨日は検査では肺炎の症状もなければ、血液検査でも肺炎でなかったのに?」







『あぁ、その時はまだ喘息か気管支炎だったんだろうな。






今日に熱が上がってきたから、再び検査したら肺炎になったみたいだ。







昨日の処置は、何ら問題ないし、適切であったから心配するな。






ただ、肺炎が移ってないか心配して石川先生から連絡が来たんだ。』







そう言いながら私の頭をなでる。






たまにこうやって優しくなでてくれる。
こんなことされたら、もっと甘えたい。








『もう少し寝てろ。今は何ともなくても、夜に熱が出てくるかもしれないからな。』







そういうと、頭から幸治さんの手が離れる。






離さないで…と思うのだけど、今更言えない。