いよいよリハビリ。
と言っても初めてじゃない…。
何度この病院で、術後のリハビリをしてきたことか。
体を起こすことはできる。
看護師さんに付き添われて車椅子に乗ることも。
そこからが苦痛…。
まだまだ傷が痛むから、ゆっくり動こうと車椅子から立ち上がる際に、腕に力を入れ…った瞬間!
「ぃたーーーぁい!!!」
ゆっくり過ぎて胸に力が入ってしまった。
『ゆっくりでいいんですよ。』
看護師さんに体を支えてもらい、ゆっくり立ち上がる。
まずは部屋の前から 一歩、二歩、三歩…
と数歩進んだところで止まって休憩。
本来なら、ここら辺で今日は終わるけど、早く復帰したい私は、リハビリのスケジュールをきつめに設定してある。
『大丈夫ですか?』
心臓外科の看護師さんだけど、私が研修医であることは知ってるようで、年下の私に敬語を使う。
そういうのやめてもらいたいな…。
研修医であっても何もできないんだし。
今は患者なんだから。
そう思うけど、なかなか言えるものではない。
「後少し歩いたら…
ハァハァハァ、
やめますので…。」
そういい、さらに10歩くらい進んで帰ってきた。
「ハァハァハァ、ふぅ〜。」
あれ…?
結構きつい。
『佐藤さん、どうされました?』
息切れしながら車椅子の前に立ち尽くす私を心配して、声をかける看護師さん。
「い、いえ…。何も。」
これの…ことかな…。
石川先生が言ってた、少しのことで息が上がるっていうの…。
その日はベッドでゆっくりしていないといけない気がして、じっとしていた。
あの胸のドキドキ…。
息の上がり具合…。
あまりにも少しのことで息が上がって、正直驚いた。



