未知の世界5


「一昨日のことは、覚えてるかな?」







一瞬、はるちゃんの顔が強張る。







だけど、黙り続けるつもりはないのか、私の目をしっかりと見つめる。








凛とした綺麗な瞳。







『私…、学校で水泳部に所属してるんです。』









「そうなんだ。」








『ここ数ヶ月、体力がなくなったのか、全然泳げなくって…。








今までは学校代表にも選ばれて、大会にも出てて。







そうすると、大会に出てるメンバーだけで遊ぶこともあるし、携帯のLINEでグループ作って会話することもあるんです。











だけど、最近、タイムが全然伸びなくて。それ以上にどんどん落ちて、選手からも外されて…。』







目頭が熱くなってきたのか、凛とした瞳に涙が浮かぶとすぐに頬にこぼれおちる。







「そうなんだね、辛かったね。」






はるちゃんの背中をゆっくりさする。







『ヒッ、ヒック…。』







「はるちゃんはるちゃん、落ち着いて。発作が出ちゃうから、深呼吸。」





フーっと息を整え涙を拭う。







『もう部活行くのも嫌になってきて…。しかも、学校に行けば、顧問の先生とか部活のメンバーにも会うし。





だから…、だから。







学校に行く途中の河川敷で座ってたんです。








しばらく座って、学校休めないし、行かなきゃって思って立ったら…







突然目眩がして川に落ちてしまって…。』








それからはるちゃんは黙った。








「そうだったんだね。







分かったよ。辛かったね。」







今度は静かに涙を流した。