「一昨日のことは、覚えてるかな?」
一瞬、はるちゃんの顔が強張る。
だけど、黙り続けるつもりはないのか、私の目をしっかりと見つめる。
凛とした綺麗な瞳。
『私…、学校で水泳部に所属してるんです。』
「そうなんだ。」
『ここ数ヶ月、体力がなくなったのか、全然泳げなくって…。
今までは学校代表にも選ばれて、大会にも出てて。
そうすると、大会に出てるメンバーだけで遊ぶこともあるし、携帯のLINEでグループ作って会話することもあるんです。
だけど、最近、タイムが全然伸びなくて。それ以上にどんどん落ちて、選手からも外されて…。』
目頭が熱くなってきたのか、凛とした瞳に涙が浮かぶとすぐに頬にこぼれおちる。
「そうなんだね、辛かったね。」
はるちゃんの背中をゆっくりさする。
『ヒッ、ヒック…。』
「はるちゃんはるちゃん、落ち着いて。発作が出ちゃうから、深呼吸。」
フーっと息を整え涙を拭う。
『もう部活行くのも嫌になってきて…。しかも、学校に行けば、顧問の先生とか部活のメンバーにも会うし。
だから…、だから。
学校に行く途中の河川敷で座ってたんです。
しばらく座って、学校休めないし、行かなきゃって思って立ったら…
突然目眩がして川に落ちてしまって…。』
それからはるちゃんは黙った。
「そうだったんだね。
分かったよ。辛かったね。」
今度は静かに涙を流した。



