「親父たち、来たみたいだな。」
何かの気配に気づいたのか、パッと目を覚ますと、隣には幸治さんがいた。
その顔を見て、顔が緩む。
「なかなか起きてる時にこれなくてごめんな。」
そんなことない。
私が目を覚ますまで、ずっとそばにいてくれたでしょう?
「もう大丈夫だからな。」
そう言って私の胸を指差す。
『ありがとう…ございました。』
握られている手を強く握り返した。
もう一度、この手を握ることができた。
もう一度、あなたの顔を見ることができた。
「あんまり泣くと、目が腫れるぞ。」
そう言われ、涙が頬を伝っていることに気づく。
どのくらい経ったのか分からないけど、お父さん達が来た時にも、涙を流していたので、瞼の感覚が鈍っている。
「親父達から聞いたと思うけど、これからは日本にいるみたいだから。
よろしく頼むな。」
『はい…。』
こちらこそ、よろしくお願いします、だよ。
そう言うと、幸治さんは時計を確認して立ち上がった。
「ごめんな、もう行かないと。」
え?もう?
『忙しいの?』
「あぁ、今早川先生が学会でいないから。早川先生から頼まれていた子の容態が良くなくてな…。」
そうなんだ…。誰だろう…。
早川先生の指導を受けていたから、どの患者さんから気になる…。
早く復帰したいな。
「じゃあ行くな。ゆっくり休めよ。」
そう言いながら私の頭をソッと撫でる。
もうちょっと…そばにいたかった。



