エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》

「えーっ!もう帰るのか、弘輔、参観の事、パパに聞かせてくれないか?」

と言ったら、弘輔は話しをしたそうに、美佐子の顔を見たが、美佐子は首を横にふっていた。

 すると、中条は最後の手段で、美佐子に

「実は先生に聞いてほしい事があるんだけど…」

と切り出した。

「先生には先程、お会いしたけど、まだ何かお聞きする事があるかしら?」

「ああ、最近、病状が安定してるからしばらく家に帰りたいと思って…」

(まさかでしょう!?)

 美佐子はそう思ったが、さすがにそうは言えず、

(とりあえず、聞くだけ聞いて、返事はなんにせよ、ダメだったと言えばイイ。)

 そう考えて、

「分かりました。では先生に聞いてみるわ。弘輔、参観の事、パパに教えてあげてね。」

 美佐子はそう言うと、病室を後にした。