エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》

 美佐子は無視されて、腹がたったので

「今日は、弘輔の参観だったの。今、帰りなんだけど、弘輔がどうしてもパパに会いたいって言うものだから…」

とまるで、だから仕方なく来ました。と言わんばかりの口調で言った。

「そうか。それはわざわざすまないね。」

「いいえ、だからもう帰りましょうか?弘輔。」

といまにも出て行きそうになったので、中条は

(なに?まだ来たばかりじゃないか!今、帰したら弥生と鉢合わせしないとも限らない。もう少しここに引き止めなくては…)
            
と考えていた。