病室では、中条がまだ先程のキスの余韻が覚めやらずにいた。

(俺の想いは、弥生に通じたのだろうか…)

 そう思うと自然に顔が緩んで、ノックされても真顔に戻せずに、思わず、

「は〜い。」

と、機嫌よく返事をしてしまった。

(まあーいい。どうせナースだろう。)

 そしたら、入ってきたのは美佐子と弘輔だったので、中条は一気に現実に引き戻され嫌がおうにも真顔になった。

「まあー調子良さそうじゃないの!それとも何かいい事でもあったの?」

 開口一番、美佐子は嫌味を言ったが、

 弘輔が、

「パパ〜大丈夫!?」

と、走り寄ってきたので肩を抱いて美佐子には返事せず、

「ああ、大丈夫だよ。」

と、弘輔に言ってみせた。 

しかし、頭の中では、

(弥生がここを出て、まだ5分ぐらいしか経っていない。まさにニアミス。危なかった)

と、とりあえず安堵した。