数日後、弥生は中条の病院を訪ねていた。

 勿論、この事は誰も知らない。

 普段から誰とも話さない弥生の事を気に掛ける者はいなかった。

 三度の食事は、時間通りに運ばれるので、その時、部屋にいれば何も問題なかったのだ。

 仮に、弥生が部屋にいない事に誰かが気付いても、どうせ庭に出て、花でも眺めているのだろうとしか思わない。

 さすがに、堂々と正門から出る勇気はなかったが、外に出る事じたいが18年ぶりなのだ。

 弥生の胸は高まっていた。

 しかし、中条に私の想いが伝わるだろうか。

 それに、病室に誰がいたら絶対に入れない。

 今日の訪問が、無駄足にならない事を願って、自動ドアから玄関を入っていった。