一方、もう一人の母、望は

(とにかくお通夜には行ってみよう)

と、喪服や小物を揃えている所にケータイが鳴った。

 ディスプレーを見ると夫からだと分かったが、なんとなく出るのが躊躇われ、しばらくして仕方なく取った。

 出来れば、夫をこの件に巻き込みたくなかったのだ。

 だから声が沈んでしまったのかもしれない。

「ハイ。もしもし。」

と望が言うと、

「あっ!俺だけどなんかあったのか?買い物はしたんだろう?」

と、谷川はすぐに望の異変に気が付いた。

「うん。したよ。でも…」

 望が、そこから先は何も言えずにいると、

「何でも話せよ。そう約束しただろう。」

と、谷川はムキになった。

「うん。分かってる。だけど、自分自身どうするかハッキリと決められないから…」

「だから、その迷っている事を話して欲しいんだよ!それとも何?また自分だけで決めて俺たちはカヤの外か?そんなに俺って頼りないのか?」

 そこまで言われると、逆に夫に話さずに出かけていって、万が一そのまま帰れなくなったら、また、辛い思いをさせてしまう…と考えて全部話そう!と望は決心した。