弥生は一人で部屋にいたが、特にする事もなく時間だけが過ぎて行く、この状況にただ耐えるしかなかった。

 昼ごろからはおもむろに弥生の部屋のドアの真前に見張りの男が立っている。

 もう何をしても無駄だと言わんばかりに…。

 しかし、弥生にはそんなプレッシャーは通用しなかった。

 とにかく、平静を保ち、チャンスを待つだけだ。

 後は、二人がここを抜け出し、望を尋ねてくれたら…そしてあのUSBがマスコミの手に渡った時が中条家の崩壊の時だ。

 あのペンダントを昨夜のうちに、勇に託しておいて良かった。

 後は、火菜がうまくやってくれる事を祈るしかない。

 弥生はまだ一人で立ち向かうつもりでいた。

 でも、まさか今日にも中条が亡くなると思わなかったので、昨夜、勇とは簡単に別れてしまった事を後悔していた。

(ああ、出来る事ならこの胸の中であの子をギュッと抱き締めてやりたい。)

と願わずにはいられない程に勇を恋しく思う母だった。