しかし、男は何の反応もなくぐったりしている。

(多分、熱中症だろう。)

 黒沢はそうと分かったが、助けようともせず、無反応の男の横腹を思い切り蹴飛ばした。

 それでも、男は身動き一つしない。

「完全にアウトだな。仕方ないさ。任務を全う出来ないお前が悪い。死ね!」

 黒沢はそう捨て台詞を残すと、屋敷に戻った。

 そして、美佐子に報告すると、

「そう。それは大失態ね!でも、まだこの屋敷内に潜んでいるかもしれない。まさに『飛んで火に入る夏の虫』じゃないの。なんとしても捕まえて!源を捕まえたら、ほぼアイツらの息の根も止まったも同然だから…いい報告を待ってるわ。後はお願い。」

 美佐子は、

(挽回して…)

と言う代わりに黒沢にキスをした。

 黒沢も美佐子に答えるように強く抱き締めて、

(任せてください…)

と心で答えていた。