美佐子は、黒沢と長電話をしていたが、望が買い物を終えてショッピングモールを出た所で、一旦、電話を終わらせた。

 そして、最後に黒沢に

「それじゃあ、望が家に帰り着いたのを見届けたら、そこを誰かに引き継いでここに来て。私たちはもうすぐ斎場へ行かなきゃならないから、アナタには私の代わりにココに残って指揮を取って欲しいのよ。」

「分かりました。交替したらすぐ帰ります。」

と、黒沢は言った。

(いくらなんでも、もう13時だ。夫が死んだのに傍にいないのはおかしいだろう。)

 それに、中条の顔の事もある。

 結局、黒沢には言えなかったが、中条の死顔は悶絶して苦しんだ形相で、最初に見た時にドキリとした。

 普通、ガン患者はそうかとも思うが、痛みはモルヒネなどで抑えてあるし、亡くなる時は安らかな表情になって亡くなる人が多いのだそうだ。

 やっぱりあの男はやぶ医者だ!

 イヤ、かなり冷酷なサディストなのだろう。

 仮にも、中条は私の夫だ。

 それを何の躊躇いもなく実験台にした。