エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》

 もう、そうに違いないのは明らかだ。

 やはり美佐子は侮れない。

 中条が死に、私にまで見張りがついたという事は、弥生たちの計画がバレたという事だろう。

 それじゃあ、もしあの屋敷を抜け出せても、私の所に来たら捕まる。

 望は全身の力が一気に抜けて行くようだった。

 弥生たちにこちらから連絡が取れれば…

 今は、じっと待つだけの我が身が辛い。

 いつも、私はただ待つだけで何も出来ない。

 しかし、ここで何とかあの男をまいても、既に家がバレていたら何もならない。

 いや、今は何も気付いてないフリをして、帰路に着くのが懸命だろう。

 そう思って、望は重たい腰をあげた。