ティナがこのサルビア孤児院に来てから10年が経ち、俺たちは17歳になった。


「リト!そろそろ行くよ!」

「ちょっと…待てって…!」


この10年間でティナは自然に笑うようになった。ゆっくりゆっくり、長い時間をかけて漸くここまで来た。俺が引っ張っていた手を、今ではティナが引っ張るようになった。その変化がとても嬉しかった。

そして俺のティナに対する感情も、10年で大きく変化した。家族への好意から、異性としての好意へ。そんな事、ティナは知らないだろうけど。


「リト兄ちゃん、ティナ姉ちゃん、行ってらっしゃい!」

「行ってきまーす!」

「ティナは何でそんなに元気でいられるんだよ…」


16歳になってもまだ人懐っこいアルの声に送られて、俺たちは家を出た。
外に出ると、辺りは白く染まっていた。冷たい風に頬を撫でられ身震いした。


「…寒」

「ほら、早くしないと始まっちゃうでしょ。早く早く!」


人間は、人生の中で大きな分かれ道に直面する。俺たちはそれらの道のいずれかを選ばなければいけない。

そして今日が、俺たちの運命を決める人生最大の選択の日だ。