甘い恋、運命の愛

「はい、これ持って」

ドサッと、音を立てて積み上げられたのは分厚い本。

しかも、二、三冊とかいうかわいいものじゃない。

軽く五冊...ううん、多分、八冊はある。

「あ、後もう一冊持ってくるから、ちょっと待ってて」

反論する隙も与えず、本棚に消えた時雨くん。

「...持てるかな」

初めてきた図書館での行いが、読書ではなく、ただの荷物持ち。

何気にひどいよね。

もう少し温厚で、気遣いができて、紳士的な人っていうイメージを抱いていたけど、そんなこと無かった。


人使いは荒いし、少し毒舌だし。

でも、意外と優しい。

「...素顔を見た感じ、する」

「これ、素顔なんかじゃないよ」

「うわっ、!」

いつの間にか戻ってきた時雨くん。

しかも、一冊じゃなくて、二冊も本持ってる。

「意外だね、僕の素顔を見たいの?」

「え、」

「別に倉本さんだから、いいんだけど...」

何かお悩みの様子。


「...まぁ、いいや」

そう言うと、積み上げられた本のうち、五冊を私の目の前に差し出した。

「え?」

「え?じゃ無くて、持って」

「え、待って...重っ!」

意外と重さがあり、五冊で限界。

「頑張って、早くしないとおいて行くよ?」

「まっ、待って...!」

「待たない」

意地悪なことを言いながらも、待っててくれる時雨くんはきっと、心が優しい。

「遅い、もっと早く歩けないの?」

前言撤回!

やっぱり、優しくなんかない。

「そこ、一旦おいて」

図書館の出入り口前にある、小さなテーブルに本を置かせる時雨くん。

「え、時雨くん...!?」

「はい、これでさっきよりはマシでしょ」

優しくないとか言って、ごめんなさい。

「あ、ありがとう!」

二冊になった本を急いで持ち、時雨くんの元へと駆け寄った。