逆光でよく見えないけど、この声は間違いない。

「時雨、さん...?」

「嫌だなー、時雨くんでいいし、いっそのこと翔って呼んでくれてもいいよ?」

そういいながら近づいてきた。

「結構です...!それより、どうしてこんなところにいるんですか」

質問すると、しゃがんでいた私と同じ目線に腰を下ろし口を動かした。


この人のこと、あまり知らなかったけどすごくきれいな顔してる。

パッチリ二重で、まつげは私よりも長い...と思う。

無造作にセットされた髪の毛は、黒に近い茶色。

きっと身長もそれなりにあるだろうし、足が長い。

うらやましいな、なんて思ったそのとき、形のいい眉がピクリと動いた。

「僕の話、ちゃんと聞いてた?」

眉と同様、形のいい唇を動かし、そう問いかけられた。

何の話だっけ...?


「えっと、聞いてました...」

「本当?じゃあ、僕が言ったこと言ってみて」

唐突過ぎて、もはやパニック状態。

混乱ですでに涙は止まってるし。


「聞いてなかったでしょ?」

そのとおりです。聞いてませんでした。

「ごめんなさい...」

「もう一回言うから、今度こそ聞いてて。」

それを聞いた自分を恨むのは、その2分後だった。