「好き、です...!」

季節は春。

卒業シーズン真っ只中。

つまり、別れの季節。

「えっと、気持ちは嬉しいんだけど...」

曖昧に言葉を濁す先輩。

もう、返事聞かなくても大体わかった。


失恋、しちゃった。

ずっと憧れてた先輩に、人生初の告白をささげた。

「俺、実は彼女いるんだ」

聞こえてきたのは、そんな言葉だった。


「そうだったんですか...聞いてくださって、ありがとうございました」

うつむきながら、必死でお礼を言う。

「お元気で...!」

涙を見られないように、精一杯の笑顔を作って走り出した。



向かった先は、視聴覚室。

絶対に人が来ないし、カーテンがかかっているからそんなに明るくない。

失恋後に来るにはぴったりの場所。


嗚咽を我慢しながら、私は泣いた。

「彼女いたなんて、知らなかったよ...!」

今思えば、先輩のこと何も知らなかった。


「僕は知ってたよ?」

いきなりの声に思わず肩が上がった

顔を上げるとそこには、学校一の優等生が満面の笑みで立っていた。