あまりに落ち込む私を見兼ねて、有美が合コンへと誘ってくれた。
 勿論そんな気にもなれないので断ったが、無理矢理に連れて来られてしまった。

 私の向かいに座った太田さんと言う人は、大手企業で営業部だそうで穏やかで優しそうな人だ。
 しかも、背が高く整った顔をしている。

 太田さんはニコニコと話かけてくれるのだが、私には全く興味の無い話で退屈になってきていた。


 太田さんに家まで送ると言われ、皆が背中を押すものだから、私は太田さんと歩く事になってしまった。


「寒いですね」
 太田さんの声は優しかった。


「そうですね」

「今度、僕と一緒にお食事でもいかがですか?」

「……」
私は返事に困って俯いた。


 太田さんは黙っていた私に、自分のマフラーをかけてくれた。

 でも、全然、暖かく無い―。

 白いふかふかのマフラーがいい―。


 私はマフラーを外し、太田さんにお返しした。


「ありがとうございます。マフラーは結構です」

「そうですか……」

「また、いつか気が向いたら食事に行きましょう」

 太田さんは、それでも優しく声をかけてくれた。

「ごめんなさい…」
 私は頭を下げ、太田さんに背を向け一人家へと歩いた。

 本当に優しい人だけど……
 彼以外は、みんな悪い人にしか見えない……



 私は家に戻ると、白いマフラーを取り出し、捨ててやろうと持ち上げたのに、ぎゅっと抱きしめ、次から次へと涙が溢れ出てきた。

 こんなに苦しむとは思ってもいなかった。

 絶対に迎えに来るなんて思い上がっていたから罰が当たったんだ……


 こんなに、悲しい思いをするなら、あの時カッコ付けずに『すき』だと言えば良かった……


 待っていて欲しいって言えば良かった……


 今になってこんな気持ちに気付くなんて私はバカだ……