彼は紳士服のチェーン店の駐車場に車を停めた。


私は彼と並んで店の中を歩いた。
私は店に並ぶ男性用のスーツの中の一枚に目が止まった。


「私思うんですけど、海原さんはこっちの方は似合うんじゃないかな?」
私はグレーの少し細めのスーツを手に取って彼に見せた。


「騙されたと思って試して見て下さい」
私はスーツを彼に渡し、背中を試着室へと押した。


 ああ、また余計な事しちゃった…… 
少し後悔したが、絶対に似合うと確信があった。


「どうかな?」
彼はスーツに着替え、試着室のカーテンを開けた。

 えっ…… 思っていたよりか、ずっと似合っていた。
以外と胸板も厚くてがっちりとしていて男らしかった。


「やっぱり!」

 私は彼が試着している間に、もう一着スーツを探して手にしていた。


「今度はこっち」
私はスーツを彼に渡した。

「はいはい」
彼は諦めたように試着室へ入っていった。


「どうですか?」
彼がカーテンを開けた。

私の横には落着いた男性の店員がにこやかに立っていた。


「お似合いです」店員が言った。


「う~ん。悩むなあ。やっぱりさっきの方かな?」
私は言ったが、まだ彼は買うとも言っていなかった。

 しかし、彼はにこやかに始めに着たスーツを店員に渡した。

 私はYシャツがサービスとの事に、スーツに合わせ必至に選び、薄いグレーのストライプシャツに決めた。
 そして、ネクタイを数本持ち彼の前に立った。
 ネクタイを一本づつ手にして彼の顔とスーツに合わせた。
 私は彼のイメチェンに楽しんでいた。


 でも彼は私と目が合うと何故か下を向いてしまう……

 まだ、怒っているのだろうか?



「これだ!」
 私は納得出来る一本を見つけ彼に言った。

「これは、私にプレゼントさせて下さい」


 だって、私はまだ英会話レッスンのお礼も彼にしてないし、何度も奢ってもらっているのだ。

 このチャンスを逃してはまずいと、急いでレジに向かった。