…でも樹は、悪いところばっかってわけでもなくて。




あたしがピンチの時には何かいつも助けてくれて…




だからこそそんな樹の言う事をあたしは聞いてしまうのではないか…、と。




だけどみんなが必ず聞いてくることが1つ。


“樹くんと付き合ってるの?”


その度にあたしは、『なわけないじゃ~ん』と笑って言っていた。





よく考えれば樹とあたしは、そんな雰囲気になったことが一度もないし。




それよりも樹を恋愛対象に考えたことが無かった。






樹はどう考えてるんだろう?

…ま、どうでもいっか。






「何か考え事でもしてんの?」

ひょいっと樹があたしの顔を覗き込んでそう言った。




「…ん、あっ!!

何でもない何でもないっ」




気が付けばもう、高校の門の前まで来ていた。




家からわりと近い高校だったから、あっという間についたんだなぁ…





なんて、呑気に考えて。