思い出せば思い出すほど…

あたしは他のどんな女の子たちよりも、この男に悩まされたはず。




喉が乾けば、『愛梨、喉乾いた』と一言。

…は?だから何?


と…、

一般的にはそうなるだろうけど。

あたしの場合は何故か反抗することが出来ない性格で、うん、何故か。



買ってくれば、これ飲みたくないとか。

これ食べたくないとか…



しかも、常に樹の側に居させられて。言うこと聞かされて…




…そ、そのせいで!!

あたしが今まで何回、呼び出しをくらったことか…




バレンタインなんてほんっとに最悪な行事!

樹は甘い物が大嫌いだから全部あたしに渡される女の子からのチョコ。



そのせいで一昨年のバレンタインの時なんか、食べすぎで2日間の腹痛に襲われてしまった。

…食べたのかよ、みたいな。



しかもっ!!

美菜の情報で知ったあたしのことが好きという男の子の事で、

あたしがルンルン気分でいれば…




即座にそのことを樹は知って。






「アイツ下着3日間も変えないし、風呂も入んないんだよ」


樹の流したこの“デマ”によって何人もの男の子達があたしから離れていった。



入らないわけないでしょっ!?

変えないわけないでしょっ!?!?






とにかくコイツは自己中心的!



みんなは『樹くんって格好良いよねぇ』とか『マジ優しい』とか『あの笑顔ヤバい〜』とか?





あたしは聞いてていつもいつも、


そんな女の子たちを可哀想に思っていたのです。