本当は心の中で樹に対しての罪悪感とか、

ちゃんと話をすれば解決するってことも分かってたのに…



やっぱり樹はあたしとは違ってみんなに人気があるから、遠い所に行っちゃうとか、誰かに取られちゃうだとか、


そんな小さいな事ばかり考えていた。



…本当は分かっているのに。







そう思って教室に入った瞬間、…目の前にいる樹。


ウェイター姿を見るのは初めてだったから少しだけ心臓がトクンと跳ね上がったのが分かった。



…誰が見ても格好良い、


そんなことを思っていると樹と視線がぶつかる。



『ごめん』

一言、言ってしまえば…



きっとこの不安だって少しぐらいは和らいで、きっと樹はあたしを安心させてくれる言葉を掛けてくれる。



そう思った時だった…



「あっ、矢上くん!」

突然そんな声がしてその声の主はあたしの横を通り過ぎていく。



三人組の女の子たちで、その声の感じから…、

あぁ、きっとこの子たちは、



…なんて、そんなことがすぐに分かってしまっていた。


その瞬間に言い表せない不安があたしを襲って、その場から逃げたかったのに逃げることが出来ずただ立ったまま。





するとその子は言った、



「…あのぉ…、あたしと一緒に文化祭回ってくれませんか!?」


キラキラした目で、それになにより…

あたしが一番欲しいものを持っている子だった。



“素直さ”そんなものを。