――ピーンポーン
樹の家のインターホンを鳴らしてから、
多分きっと10秒ぐらい?で家の中から智子さんが出てきた。
良かった…、
心の中で少しばかり、あたしは樹じゃなかった事にホッとしていた。
「…あらあら~、愛ちゃんっ
あっ、もしかしてまた由梨ちゃんのおかず頂けちゃうのかしらっ」
智子さんはそう言って、嬉しそうに笑ってみせた。
「うふふっ、そのまさかですっ
…はい、これお母さんからです」
よし、…これでもう帰っちゃおう。
そう思っていると…
智子さんはまたあたしに言った。
「そういえばねぇ…、樹ったら何か今日、機嫌悪いみたいでね?
部屋にいるから行ってあげてくれないかなぁ?
…愛ちゃんがいけば、きっと機嫌も良くなると思うからっ」
智子さんは、そのままニコッと笑ってリビングへと向かった。
言えない…、
「あぁ、…きっとその原因はあたしです」
だなんて、
でも、これであたしが帰ったら、
智子さん…
心配するだろうなぁ…っ。
仕方ない。
あたしはそう心の中で決意すると、樹の部屋へと向かった。

