「はっ…、間に合うかなぁ…」


今日はやたら無駄に走っている気がする。
いや、これも全部自分自身のためでもあるんだ。


先輩と少しでも一緒にいたい。

そんな自分勝手なわがままのため…


なんてことを考えていると、授業のチャイムと同時に次々と廊下に生徒が増えていき、授業の終わりを知らせる。


「お、吹季!」


「…先生!?」


私たち生徒のことを名前で呼ぶのは、体育会系色黒お兄さんタイプの担任の先生だ。


「もう大丈夫なのか?詳しいことは那月たちに伝えてるから。頼むぞ〜」


「あっ、はい」


何がですか?
本当はそう聞きたいはずなのに、サボってしまったという後ろめたい気持ちがあるせいか、つい自然な流れで返事をしてしまう。



「「吹季ー!」」


数メートル先から手招きをしながら私の名前を呼ぶ那月と亜子。


二人の顔を見るなり、駆け寄る私を目を輝かせながら思いっきり抱きしめる。