「まぁ、とにかく私は塚本先輩の代わりにそれだけ伝えに来ただけなので。それと、あまりサボりすぎちゃダメですよ」


「吹季はどうなの。人に言えないじゃん」


教室へ戻ろうと立ったときだった。先輩と目が合い、10秒ほどフリーズした後、ある場所へ視線を向ける。


「い、今何時ですか!?」


部屋の中にある時計が止まってることに今更ながら気づき、急いでポケットに入れていた携帯を取り出す。


「お昼時間を過ぎてるってことは…とっくに授業始まってるじゃないですか!しかもあと五分で終わる…」


「たった一時間くらい別にいいんじゃない」


いや、その一時間が私にとっては学年の違う先輩との時間を築ける貴重なチャンスだった。


そう、それは、HRの時間だ。


次のHRに学園祭の実行委員を決めると担任の先生は言っていた。

特にやりたいとか興味があるわけじゃなかったのに、直前のお昼時間に塚本先輩から話を聞いて私の心はかなり動いたんだ。


先輩がいるなら…やってもいいかな。
なんて、思ってしまったことは先輩には何が何でも言えない。


「それよりさ、数馬が吹季たちの教室に来たんでしょ?何の話し…」


「私、教室戻りますね!!大事な授業なんです。じゃ先輩また…!」


先輩の声が届く前に先に口走ると、急いでこの部屋を出て教室まで全力で走り抜ける。