「吹季〜!遅刻三回目なの?先生が放課後掃除って言ってたけど」
そう、これもあの男の人のせい。
あのとき行かせてくれてたら掃除しなくて済んだのに…
「あの人のせい…」
「ん?あの人って?」
自分の席でぐったりと倒れこむ私を不思議そうに見てくる那月と亜子。
「え?あ、何でもないない!今日も朝から疲れちゃって」
「見たらわかるよ。すっごい急いで来たから、カバンも忘れて手ぶらってわけね。ほんと吹季ったら〜」
さすがにカバンは忘れないって〜!
そう言いながら持ってたつもりの手をあげると、そこには本当に手ぶらの自分がいた。
「…嘘!なんで…!?」
ないことを確認するとすぐにあることを思い出す。
「あっちに置いてきちゃったんだ…」
男の人を突き飛ばしてすぐにあの部屋を出たから。きっとあのときに忘れてきたんだ。
取りに戻るなんて嫌だな…そう思った瞬間、
廊下からものすごい勢いで鳴り響く女子の悲鳴のような歓声のような声。


