「あぁ…、どっかで無くしたと思ったらあんたが拾ってたんだ」


何はともあれ持ち主に無事返せたってことで、私の任務は終了。


そのとき丁度学校のチャイムが鳴った。


「や、やばい!!急がなきゃ…!」


今なら教室まで走れば間に合う!
上に乗ってる男の人を払いのけてこの部屋から出ようとしたとき、ガシッと腕を掴まれて元の場所へ戻される。


「きゃっ…なっ、なんですか!?勝手に入ったことは謝ります!でも今は時間がなくて…あと一回遅刻すると…」


「うるさいのは嫌い。ゆっくり寝れるのはここだけ。だから誰にもこの場所を教えないこと。もし誰かに言ったら、言ったその口どうなるかわかるよね?」


これって…キ…ス、される…?


より近づいてきた男の人の顔を思わず反射的に引っ叩くと、男の人の肩を思いっきり突き飛ばす。


「誰にも言いませんから…!!お邪魔しました」


さっきまでの出来事は何だったのか。あんな間近で男性の顔なんて見たことないし、押し倒されたことなんて、なおさらない。


ただただ心臓の音と脈だけが早くなっていって、恋愛経験のない私にとって何が起こったのかすらよくわからない。


けど、そんな私にもわかったことがある。

今あの部屋から出たあとに気づいたんだが、あの男の人…今まで見た中で一番かっこよくて、目を合わすとなぜか引き込まれそうになるほど魅力的な人だった。