待ちわびた翌週の土曜日。
お出かけには最高の天気だった。

「あー服どうしよう、スカートだと気合い入りすぎ?パンツはデートでどうなんだろ…って時間!急がないと!」

結局間をとってキュロットにブラウスを合わせ、セーターを重ねる。
家を出る前にもう一度髪の乱れを整えて駅へ向かった。

「えっと、今50分だから、ちょうどいいかな」

待ち合わせ近くで時計を確認すると10分前。
ちょうどいい時間にほっとすると、少し歩いたところ、樹の根本がベンチになっている場所に見知った顔があった。

「真壁くんっ」

その姿を見つけて駆け出して近寄る。
まさか先に来てるなんて。
手元の本から目を上げて真壁くんの顔が私を捉えた。

「神月さん」
「ごめんね、待たせて」
「時間まだだし。本屋行きたかっただけ。行こうか」
「うん、あの…よろしくね!」
「それこの間も聞いたけど」
「そうじゃなくて…デート、初めてだから。失礼がないようにするつもりだけど…」

そこまで言うとふ、と真壁くんの笑う声が聞こえた。

「神月さん真面目すぎ。力抜きなよ」
「抜きたいんだけど…緊張する」
「素直。まぁいいけど。映画なに見るの?」

真壁くんがゆっくり歩き出す。それに合わせて横に並んだ。
こんなのも、かなり新鮮で緊張する。

「え…と、今週からやってるSFアクションとかどう?真壁くんいつもどんなの観る?」
「けっこうアクション好き。それにしよ」
「良かった」

思ってたより普通に話せる。
デート、緊張するけど楽しいかもしれない。

映画館に向かい、ポップコーンを買ってきてと頼まれた間に真壁くんはチケットを用意してくれていた。

「スマートだ…」
「何それ褒めてるの」
「褒めてるよ!真壁くん、やっぱり慣れてるね」
「その発言受け止め方難しいんだけど。まあ映画館は割りと来るから」
「そうなんだ…私、久しぶり」

こんなに楽しいのは初めてかも知れない。
その言葉は飲み込んで、スクリーンへ向かった。