その後家に帰るとすぐに友人の家長紗知に電話をかけた。
紗知とは今は別のクラスだけど、昨年は同じクラスだったから真壁くんのことも知ってるし、何より彼氏のいる友達だったからだ。

『え、真壁?告白したの?』
「うん、最後だからと思って、当たって砕けようかと…」
『それで成功したんだ。莉果おめでとー』
「でもさ、こんなことになるなんて思ってなかったから…どうしたらいいの?」
『どうしたらって、付き合えばいいんじゃない?』
「それが分かんないの!紗知彼氏いるじゃん。彼氏って何?どうするものなの?」
『落ち着いて、莉果。ていっても、学校でもうそんな会わないし、デートでもすれば?』

デート。これまた未経験者には未知のものだ。
何をしていいのか分からない。

『最初だから映画とか買い物とか行けばいいんじゃない?真壁も受験終わってんでしょ』
「うん…推薦でもう決まってるみたい」
『じゃあいいじゃん、二人とも進路決まってるわけだし、ゆっくり二人で仲深めなよ』

そんな簡単に言われても。

『とーにーかーく。連絡するなら真壁でしょ。二人で相談して決めなさい』
「あ、え、紗知?」

電話はすでに切られていた。
紗知はそういうとこはっきりしてる。
だから頼りになるんだけど…。

ラインの連絡先を呼び出し、まだ何もトーク履歴のない真壁くんのラインを開いた。

とりあえず、連絡先教えてもらっておいて何も連絡しないのは変だよね。

:こんばんは。今日はありがとう。これからよろしくお願いします。

「こんな感じでいいかな…」

恐る恐る送信ボタンをタップする。

「送っちゃったよ~…」

メッセージが画面に現れる。
すると意外にもすぐ既読がついた。

>こんばんは。こっちこそよろしく。

「シンプルだ…」

>チョコレート旨かった。さんきゅ。

立て続けにメッセージが表示される。
その文章だけで嬉しくて頬が勝手に緩んだ。

デート…誘ってもいいのかな。

:もし、時間があるときでいいので、どこか行かない?
次の登校日とかにでも。

>いいよ。来週の土曜日とか空いてるけど

:じゃあ土曜日にしよう。映画とかみる?

>いいんじゃない。観たいの決めといて。

:分かった。じゃあ11時に駅前でいいかな?

>了解。

「デートだ…」

スマートフォンを片手にベッドに倒れこんだ。
嘘みたい。
真壁くんとデートできるなんて。

まだスマートフォンを持つ手が少し震えていた。