君が入院してからは、週に一回くらい電話をしたね。

そうなって初めて、私は君の声も好きだったんだって気づいたの。


あの日の君は、いつもより苦しそうだった。

「大丈夫?」って聞くと、

君は「うん。多分。」って笑ってた。

いつもより短い時間で電話を切ろうとしたそのとき、

「言いそびれたくないから」って君が言ったんだ。

「美音のことが、

美音のフルートの音が、

ずっと好きだったんだ。


いつか、また、美音のフルート、聞きたい。」

じゃあ、って言って君は電話を切った。


私はしばらくその場で固まってたんだよ。