帰り道、人々の感謝の声が聞こえる。この時間が好きなんだよね。

帰ったら私の戦果も報告しないと。
まっすぐ歩くと店はそのままで誰もいない市場に来た。さっきの襲撃で皆避難したらしい。いつ再開するのかな?箱に積まれたりんごを見ていると食べたくなった。

りんごから目を離し、足元を見ると、大きな影がかかっていた。

見上げると……。

「たっ隊長……」

「ここで仕留める。引き付けるから回り込んで後ろから攻撃してくれ」

この大型のシンクは遅いから、後ろからの攻撃は有効だ。攻撃が当たると痛いからそこは気を付けないと……まあ、当たらないか。

シンクは矢矧隊長を見ている。私が今走っていることに気付いていない……。
遅くて大きい敵は叩きやすい。地面を蹴りあげ、大きく振りかぶった。

「うっ!」

振り下ろす前に、瘴気と爆風が私を襲った。
弾のような物は槌で叩き返したけど、かなりやられた。還元が間に合わない。

これじゃ攻撃は期待できない……矢矧隊長だけに任せるのもなぁ……。隊長だけでも倒せないことはない。けど、時間がかかるし何よりも攻撃を受けてしまう……。

火力も期待できないけど、やるしかない。
これだけ還元しても、まだ必殺技は使えない。でも待ってられない!

敵に向かって走り出す。その時……。

「皆川さん!私の魔力、受け取って下さい!」

もう一人の隊員が、銃に魔力を籠める。光る玉が私の胸に飛び込んできて、その後光に包まれた。
眩しくて、暖かい。

すると、損傷なんか気にならない程の力とやる気が湧いてきた。
これは、まさか……。

「えーい!」

槌を横に向ける。そして、横腹に強い一撃をぶちこんだ。
シンクは悲鳴をあげて消えていった。

「お疲れ様です。無事帰れそうでよかったです」

もう一人の隊員、光野 仁登里は髪を耳にかけ、微笑んだ。

「皆川、よくやった。光野も支援ありがとう」

「いえいえ、私はするべきことをしただけです」

そう言う仁登里が気に入らなかった。
あの時、仁登里が私に送ったのは強くて貴重な魔力だ。
ある魔法を使えば、誰がどの程度力を持っているか見えるようになる。

仁登里は必殺技をもう少しで出せるというところで、魔力を私に譲った。貯めて自分の攻撃に使っていれば評価されたのに……。

光野 仁登里は光属性。光属性は瘴気に強い。そして、強さも個人差がある。攻撃が得意や動きが速い、その逆もあったり、色々なタイプがある。

共通する弱点は、必殺技を使う時は魔力を大量に消費することだ。

私は仁登里が必殺技を使ったところを見たことがない。いつも支援にまわり、強化や余った魔力で攻撃をしている。余った魔力の攻撃はそこまでダメージを与えられない。
周りからは引き立て役に見えるのに、仁登里は文句も言わない。