「いや、したことないわけではないけど」

ケイタの言葉に心の隅で少しだけホッとして、その後に一気に不安になる。


「私とはしたくないってこと?」

思った以上に情けない声が出てしまった。もしそれが本当だとしたら、さっきまでのキスが馬鹿みたいに恥ずかしくなる。


ケイタが両腕を伸ばして私の背中に回し、そのままぎゅっと抱きしめてくれた。

「俺、こうしているほうが落ち着くんだ。続きは今度、夜とかでもいい?」


そうやって聞かれたら頷くしかない。男でもこういう人がいるのだろうかとぼんやり考えながら、私もケイタの背中に腕を回す。

私よりも少し早いケイタの鼓動を聞いていたら、確かに落ち着いた気がした。

ほんとにこいつ、子供みたい。体温がすごく高い。


ひとつだけ疑問に思って聞いてみる。

「私達ってもう付き合っているの?」

ケイタは迷うことなく「うん、そうだよ」と言った。


どこか少しだけ物足りなさも感じながら、私はケイタの腕の中で目を閉じた。