ぼくのセカイ征服

「…ゴメン…」
「別に、時任君が謝る事なんてないのよ…悪いのは私だって、解っているから。」

…何だか湿っぽい、悪い雰囲気になってしまった…。自分がこんなに未練がましいヤツだったなんて、知らなかった。かなり幻滅。
しかし、気になるのはスミレの今の言葉だ。悪いのは自分…?何で?どうして?悪いのは僕のはずだ…。
まぁ、こればかりは考えても答は出そうになく、本人に直接聞くわけにもいかないので、考えない事にした。
…これで、僕達の関係は元の通りになったわけだ。元とは言っても、訣別した後の、疎遠な状態に、だが。
なんとなく、後味が悪い、と感じたのは、僕だけではないだろう。

ともあれ。

これで、事態はほぼ解決した。後は、残りの男二人と出会わないように家に帰るだけだ。逃げていったヤツが仲間と合流していたら、ここに留まるのは危ない。とりあえず、どこかの店に…

って、そうだ…すっかり忘れていた。僕は、自分の傍らにいる、まさしく、文字通り『傍観』に徹していた少女を家まで送り届けなければならないんだった。

「君、大丈夫…?」
「………」

何故かまただんまりモードに入ってるし。扱いづらい事この上ないな、この少女は。
じっくり見ても、やはり見た事の無い顔だ。でも、僕達の高校の制服を着ているからには、やはり僕達と同じ高校に通っているのだろう。
それならば。
スミレに聞けば、何かわかるかもしれないな。
と、いうわけで。

「なぁ、スミレ…」
「…?何か?それと、呼び捨てはやめろ、と言ったはずよ…?」
「悪い悪い…あのさぁ、この女の子、知ってるか?」

指を差すのは失礼にあたるので、僕は少女のほうをちらりと見て、それとなく紹介した。

「女の子…?そんなの、どこにいるの?」
「えっ…?」

今、スミレは、僕の傍らにいるこの少女が見えない、と、そう言ったのか?
おいおい、まさか幽霊を助けた、なんてオチじゃないだろうな?

「本当に見えないのか!?ここにいるじゃないか!」

疲れているせいもあって、僕は思わず怒鳴ってしまった。お門違いも甚だしい。やっぱり僕は最低なヤツだ。呆れ顔のスミレなどお構いなしに、僕は必死に少女の存在を主張する。