ぼくのセカイ征服

僕達は、完全に離ればなれになったわけではなかったようだ。この『巡り会わせ』とでもいうべき、意外な形での再会。偶然に偶然が重なって、僕は今、こうしてスミレと向き合っている。
まさか、こんな状況で、『また』スミレに助けられる事になるなんて、世界は残酷だ。こんな展開、想像すらしていなかった。本当に、これは『運命』…というやつなのだろうか？
少なくとも、僕はある程度はそう思っている。
『全ての事象は、最初から最後まで、全て予め決められたシナリオに沿って起こっているにしかすぎない』
というのが、僕の持論だからだ。
しかし、「これは運命だ」と言い切る事は出来ない。何故なら、僕はもう一つ持論を持っているからだ。それは、
『隅から隅まで正しい持論など存在しない』
という持論。この持論自体に矛盾が発生しているが、そこには目をつむって欲しい。

話を戻そう。もし、本当にこれが…この再会が、『運命』なのだとしたら…まだ間に合う、という事だろうか？僕にもまだ、運命に従う権利があるという事なのだろうか？

それなら…

「…時任君？」
「なぁ、スミレ…僕達…やり直さないか？」
「何を突然…」

…何を言っているんだ、僕は？スミレからしてみれば、本当に、「何を突然…」だ。自分でも、何でこんな事を言ったのかよくわからない。本当は、もう一度、『ありがとう』を伝えるつもりだったのに。
なのに。
…僕は、ただ、溢れる言葉を、せき止められなかった。

「私達の関係は…」
「あの時に終わった、だろ？でも僕は…」
「…この話は、もうおしまいにしましょう…」
「…………」

…僕は何が言いたかったのだろう？あの時…ほんの少しのいさかいごときで、スミレを護る事を放棄した罪滅ぼしのつもりなのか？今更やり直せると、思っているのか？
なら、どうして…もっと早くにやり直そうとしなかった？何故、スミレを避けていた？
自問自答の末、僕は一つの結論に行き着いた。
それは…
僕は最低なヤツだ、ということ。もう、謝罪の言葉以外、何も思い浮かばなくなっていた。
…もう、僕の深層心理を反映した言葉は、口を衝いて出る事はなくなっていた。