二人で夕ご飯を食べたあの日の翌日から、蒼は家に帰って来なくなった。

正確に言うと、着替えとかは取りに来ているけれど、まるで避けているかの様に、私の居ない時間を見計らって来ている。


「はぁ~.....なんなの一体.....。あの娘の所にでも行ってるの.....?」


会社のロビーで見かけた、二人の姿が脳裏に浮かんだ。


「.....ラブラブってやつ?.....ハハ.....まぁ、たまには一人の生活ってのもいいか。よしっ!こうなったら、思い切って飲みに行くぞー!!ずっと気になってたあのお店、この際だから行ってみようかな。」


久し振りに、クローゼットに眠っていたお気に入りのワンピースを取り出した。

私にしては珍しい、シフォンの袖の付いた女らしい服。


「ちょっと、お腹周りきつい気がするけど、見た感じはバレてないよね?」


“Alternative”


最寄り駅から、程近くのBar。

大きい店じゃ無いけれど、外観はレンガ調で、ツタ植物が外壁を覆っている様は、隠れ家的雰囲気を醸し出している。

中の様子が見えないから、余計興味を唆られた。

たまに店先に、客を見送る店主らしき人も、何回か見かけていた。

とても綺麗な女の人。

常連客が多そうなお店だからと、二の足を踏んでいたけれど、今日の私はヤケだ!

思い切って扉を開いた。