旅行から帰って来てから、私はずっと考えていた。


“「硝子さん……僕、好きな人ちゃんと居るから。」”


どんなに考えても、色んな女の子が頭に浮かぶばかりで、候補が定まんない。


「いったい誰なの……?好きな娘いたなら、教えなさいよ……もぅ……。いきなり言うなんて驚くじゃない。」


そうだ、ただ単に驚いただけ……。

また一人に戻るだけだもの、何も変わらない。

おまじないの様に、何度も心の中で呟く。


「なんだぁ?独り言激しいぞ?ククッ……。」


「えっ?!!」


「気づいてなかったのか?アハハッ!!ヤバいぞそれ?」


「なんて言ってたか聞こえてた?」


「いや、驚いたとかは聞こえたけど、その前後はよく聞こえなかったよ。何かまずい事でも口走ってたのか?聞いとけばよかった。」


「いやいや!何も無いよ!!仕事関係!!仕事関係でちょっと……ね。」


「そう言えばさ、ずっと気になってたんだけど、社員旅行の朝食の時さ……あの……その……」


「えっ?何?」


「何つ~かさ……抱き合ってたじゃん。後藤さんと、もしかしてそうゆう仲なの?」


「はぁっ?!!抱き合ってた?そんな事ー」


反論しようとして、啓介の胸に引き寄せられた瞬間がリフレインした。


「あれは違うの!単なるお見合い相手なだけだからっ!!」


「えっ?お見合い相手なの?!!」