「本当にそうなら……なんだろう……嬉しい。」


硝子さんは、ニッコリ笑うと俺の首の後ろに両腕を回して抱きついた。


「ねぇ?それは保護者としての気持ち?それとも……」


高揚した気持ちのまま返答を待っていると、暫くして耳元で寝息が聞こえてきた。


「硝子さん??寝たの?………………はぁ~何だよこの落ち…………。」


気持ち良さそうに眠る彼女の寝顔を見ながら、愛しさが込み上げる。


「これがシラフなら良かったのに……。」


「…………んん……蒼~……んー……。」


また俺の夢を見ている様だ。

この女人(ひと)を誰にも渡したくない。

日増しに強くなるこの気持ち。

彼女を見つめていると、安らかだった表情が微かに歪んで、また涙が流れた。


「硝子さん?」


「…………あおい……今度は絶対…………ママが守るから…………。」


「結局、まだ子供扱いかよ.....。」



“彼女の全てを君が受け入れられるかな?”



適当に流していたあの男の意味深な言葉が、ふと頭を過ぎった。

硝子さんと初めて会った時から、ずっと抱いてきた疑問。

心の片隅にあった筈なのに、一緒に暮らす中でその理由を聞くことさえ放棄していた。


「硝子さんは……どうして俺を引き取ってくれたんだ………?」


眠っている彼女は黙ったまま。

俺の声は虚しく部屋に響いた。